て、やっぱりその感じでした。科学としての面白さは次第にわかって来つつあります、特に文学的になるのです手紙だと、どうしても。そうでしょう? 自分の身についたものが多ければ多いほど、その方面の本は速く、深くよめる。だから、文学的なものをよむ力とこういうものをよむ力とを比べて見れば、経済についての知識がどんなに低いかということはおのずから明瞭です。しかし実を云えば、こういうものがこれだけ面白いとはこれまで思えませんでした。どうか当分は蝸牛の歩みよしおそくとも、というところで、御辛棒下さい。私が急に一日に百頁もよんだと云えば、それはうそなのだから。何しろ、W−G−W というような式には初めて出会うのですから。そしてこんなものは云って見ればアルファベットでしょう? そこからえっちらおっちら歩いているのですから。グランマーとはよく仰云ったこと。こういう文法が一通りわかれば、随分多くの他のことがわかりやすくなるのでしょう。貨幣が主に説明されているところなど実に面白い。人間生活として面白い、バルザック風な。グラッドストーンというお爺さんは、なかなか洒落たことを申したのですね、「人間は恋で馬鹿になるより
前へ 次へ
全766ページ中218ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング