年のことでした。私たちの満五年の記念に。なかなかこまかい編輯です。ダイナミックな編輯ぶりです、科学の三つの源泉を、より深い勉強へと導く形において。
 十九日。きょうは朝大変寒くて水道が凍りました。乞食が来ておむすびを呉れというので梅干入れてやった。この頃こういうのは珍しい。金をくれと大抵いいます。
 日曜だから、けさは、こうやっていると安心するだろう、といっていらしたそういう工合のなかで暫くじっとして、雀の声をきいて居りました。月曜日にゆけるようにしておいて本当によかったこと。なかなか先見の明がおありだと思いました。四日なんかもたない、そう思いました。
 この前の日曜の私の手紙、ロダンの手のことを書いた手紙、もう着いている頃でしょう。土曜にそのお話はなかったけれども。おひささん、結婚をする相手の人がいやというのでもない、しかし勉強もやりたい気がするというので全く落付かず。きょうもその二つのことで出かけるとか出かけないとか、朝飯もたべずきょろついています。生活というものを型にはめて、おかみさんになればもうあり来りのおかみさん生活ばかりをするように考え、勉強するといえば御亭主なんかと思う。
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