分そのもののひろく複雑豊富な内容。この文字はこれまでその本の解説にもついていてよんだのですが、新しくうけとるものがあります。私は自分で理解するためにどれだけ努力がされているでしょう。
これについて又もう一つ面白いことがある。人間の内容のレベルということについて。一定以上の内容の到達をとげている人は、坐臥の間に、それ以下の人間がウンスウンスと机にかじりついている間にしか行わないことを行い得るということ。そういう練達のこと。休む時間に高等数学をしたときいて私はびっくりするけれども、休む時間に私が小説をよむといったら、本をよむのが休みかとおどろく人もあると思えば、人間の段々とは長いものですね。でも本当に、私は自分で理解するために[#「私は自分で理解するために」に傍点]どれだけのことをしているでしょう。文学においても。再び文学のプログラムのことが浮ぶ。これは他の誰彼にわかっていないように私にも分っていない。正しく今日までの過程も跡づけられていない有様です。かえって踏みかためられた小道には雑草といら草とが茂っているままです。
[#図5、花の絵]この二巻の選集[自注9]をあなたから頂いたのは一昨
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