となど話題にのぼりました。詩人気質の過去の根の浅さについても。
国男が、開成山の小学校の図書館へ父と母との記念のために本を寄附しようとして居ります。ここの図書には姓名を冠した文庫があって、殆どそれだけでなり立っている様子です。科学の本、生物学のわかり易い本、その他が第二次ので殖えるでしょう。出版年鑑等役立って居ります。昔、父が五十代ぐらいだったとき、開成山に一緒にいたことがあって、そのとき家の近くの大きい池のぐるりにある競馬場の柵に二人でもたれながら話していたとき、父は自分の父の記念のために高い高い塔を立てるというようなことを、実に空想的に話したことがありました。私は何だかすこしきまりわるいような気分で、うす笑いしながらきいていた姿を思い出します。私はよくそういう心持の思い出をもって居ります。父は本当に空想と知れたことを自身知りながらその中に入ってつくって話してゆくのが好きであった。私には何だかそのつくり方の色どりや道順に、当時の感覚で云うと純芸術でないものがあるようでバツがわるかった、あの心持。それも面白く思い出されます。さあ、もうこれでおしまい。折々はこういうお喋りもおきき下さい
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