せつつ、はっきりわかる。何か薄弱な、意識せざる抗弁的にきこえたというのは、その程度をぬけている心持にとってさもありなんと思われ、いくらか情けなくもきけたでしょうし(そのわからなさ、わからないという状態が語っている弱さ低さ)、そういう点でも、随分忍耐をもっていて下すったわけです。私は今会得されて来ているいくつかの点は確保して、手をゆるめず、仕事をしてゆきたい心持です。そうすると忽ち因果はめぐって、早ね早おきせざるを得ないというのは、何という天の配剤でしょう(!)
 きょうは大層早く床に入り休みます。そして御褒美の一つとして、詩集の中から、愛する小騎士物語をとり出します。雄々しい小騎士が、泉のほとりで一日一夜のうちにめぐりあった六度の冒険の物語。覚えていらっしゃるでしょう? この物語の魅力は、えらばれた者である小騎士が、自身の威力を未だ知らず、死して死せざる命の力に深く驚歎する美しい発見にあると思います。深い深い命への讚歎が流れ響いています。ありふれたドンキホーテの物語でないところ何と面白いでしょう。愛らしき小騎士に祝福を。
 さて、お約束の表をつけます。
    二月二十一日から三月二日
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