お思いになるのでしょう? くやしいこと。私はそれには、やっぱりかかってしまうでしょうから。但小説をかいているときは一日に何枚としか記入しないでもいいこと、これはきっちりお約束。一枚だって半枚だって一行だって、実際あることですものね。では又明日に。

 二月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 二月二十一日  第十七信
 雪が雨に変ってすっかり寒い天気になってしまいました。今そちらの門のところ、道普請(下水工事か何か)あげくで、ひどい泥濘と云ったら全くお話のほかです。
 早速ですが枕のこと、ききましたらやはりスポンジは入りません。空気枕だけの由。年中御旅行中とは恐縮ですね。どうしましょう、それを買いましょうか。
 昨日は、かえって暫くしたら婦公の婦人記者来。いろいろ話していて、女の作家のところへ行くのが一番気骨が折れます。なかなか作品の話などついうっかりは出来ませんし、云々。盛に云っているので可笑しくなってしまった。そのひとは私を思想家[#「思想家」に傍点]というものとしているらしいのです。そしてそれは思想家や宗教家の方という形で並ぶものであって、大変包括力があるのです
前へ 次へ
全766ページ中136ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング