一つ一つと営々と書かれて行かなければならず、そのことでは本年は考えるだけ苦しくつきつめるだけのところから出て来ていて、書く時が来ていると感じます。家が歩いてゆけるところに見つかったら、そのことからもいいと思います。「自分でも認識出来ない負的習性」というものは実に出没自在の厄介ものであるわけであり、「私」の問題も片面ではその最たるものでしょう。例えば表をきっちりつけないこととか、事務的にしゃんとしないこととかをもそのうちに数えられているわけですが。そして、その事自体より複雑な不快をあなたに与える心理的な性質をももっていると思われます。私はこの頃は自分の負性ということについては偏見なしに考えられるようになって来ているし、傷つけられる心持もなしに批評の言葉をもきこうという傾向です。環境的市民的性質のマイナスの作用のことも、謂わばこの頃身に即したものとして見ることが出来、その点も、自分の善意を肯定してその点から自分はとりのけとしておいて、そういうものを歴史性において見るという態度からは育って来ていると信じます。そして、真の成長のためには、現段階で自分のプラスにたよるのではなく、負性に対する敏感
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