いているのでおなか[#「おなか」に傍点]がかたくって、曲りかがみに大不便です。上体を一寸捩るような形はまだ妙に筋がつれて出来ませんがベッドから下りたり上ったりすっかり自分の力でやれます。きょうから少々歩き初めです。一日に三四度往復十間位のところを歩くようになりました。これで三四日して入浴出来るようになって、もっと足がしっかりしたら全快ですね。傷が大きいと、表面だけ癒ったようで内部はよくついていないことがあり、退院後に又深いところで苦情が生じたりする危険があるそうですがこう小さい傷だと、内からちゃんとまとまり易いから大助り。
 今は椅子にかけ、小テーブルに向ってこの手紙を書いて居るところです。咲枝がお年玉にこしらえてくれた黄色いミカンのようなドテラを着て、きのう稲子さんがもって来てくれた綺麗な綺麗なチューリップの植込みを眺めつつ。しかもこのテーブル(枕頭台から引出すようになったの)の上にはお供えが一つあってね、丸く二つ重った形を、そして、上のところに、ちょいと松竹梅の飾りをつけた形を臥《ね》ながら横から見ると、まるで私のようなの。随分似ている、似ている、と笑っていたらけさになって榊原さん
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