ともちょっとやけになって、ええ行っちゃうか、と思ったのですって。でもこちらへ来られることになって、よかったと云って居ります。ああいう勝気で弱い女のひとはそうなる、そこが何よりいけない、そんなことも話しました。
又これは、あなたのお耳へとめるだけのことですが、達ちゃんの嫁さんに岩本新という人の妹をという話があるのですって。新という人は中尉とかで、やがて大尉になるとか。大変な人気の由。たかちゃんの軍曹もそっちのひっぱりの由。
今島田附近は、ああして殷賑《いんしん》工場多く、大抵田地一二丁もってそっちは老人夫婦がやっていて、若いもの夫婦は工場がよいしてゆくというのが、理想の縁談とされているのだそうです。さもなければ財産の二三万が。たかちゃんのときも、お母さん、「豆腐やのせがれでも何でも、学士か財産の二三万ももっちょるなら話もあろうが」とおっしゃった由。ですから達ちゃんは不利なのですって条件的に。かたい農家、かたくない農家、いずれも農家の娘はダメなそうです。一そ徳山あたりからというのだそうで、それには岩本のおばさんが全権委員の由。
私は新という人は存じませんけれど。何だか一寸知っておいて頂きたくて。そして、もしお母さんに何か一ことおっしゃってあげることでもありましたら、とも思われて。これは、一般論として出して頂かないとこまるわ、ね、たか子のおしゃべりのようになっては。私たちは弟の可愛いお嫁を、考えるので。いろいろ。こんなこと、養子のこと、いろいろね。でも何だか気になること、そうでしょう? 結局達ちゃんが家のことは主としてやるのですから、そのお嫁さん、その兄、そういう関係は家庭としては大切と思うのです。生活感情の点。若い何にも知らない女のひとが、育った家庭の空気で何か身につけている、それが気になるというわけです。
或は達ちゃんの方へ一寸参考になるような意見がもしおありになったら、云っておやりになったらいいかもしれませんね。本人なのだから、いずれ、最後にきめるのは。どうぞよろしく。気になるので一寸。
今夜は林町の連中と御飯たべます。二十五日の午後から夕方までも林町にいました、二人で。赤このことや何かでゴタゴタして、それでもストーヴを珍客というのでたいて(! こういうのよ、この頃の世の中一様に)その前へアカコの脚をすっかり出してねかして、まるでうれしそうに脚を動して笑うのをよくよく眺めて来ました。アカコ可愛いの。お見せしたいこと。それから太郎とカルタとったりして。
山口さんくれぐれお礼でした。御用の折はどうぞ、と。うちの障子を、たかちゃんがフヂエを督レイして貼ってくれてさっぱり明るくなりました。昨夜は二人でお餅を切って、すこし話して、十時にねました。今夜はすこしおそくなるでしょうね。
隆二さんの手紙が珍しく来て、「僕のことはなにもなにも案ずるに及ばず。養生専一に」と、云って来て居ります。六年の間に餅菓子を一万個食った男と、ざれうたがあります。年のうちには又かきますが。明日は図書館です。まさか休みではないでしょうね。武麟さん、この前妙なわるくちを云って、こんどは真実味が云々とほめている。(『朝日』)しかしいずれにしろ、俳諧の宗匠の点つけみたいな月評は下らない。木村という人の訳のブルージエを春陽堂がよこし、マフ(手を入れるもの、女の)それをハンケチとかき手套とかき、又もう一つにかいている。こういう訳でよまされるのね、題もかえている。では又おせいぼの手紙は別に。
十二月二十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書 速達)〕
十二月二十七日 第百十七信
考えてみると、二十八日のうちについた手紙でないと、お正月に御覧になれないかもしれないのね。ああ、ではいそがなくては。こちらの本当の大晦日に書いたのでは、そちらのお年越しには駄目ね。
(ここまで書いて、たかちゃんをつれて、佐藤さんの家を教えかたがた郵便局まで行って、フト思いついて自由学園の友の会でもしや洋裁やらないかと思ってずっと奥へ歩いて行ったら、思いがけないところに坪田譲治の家がありました。いかにも雑司ヶ谷の家らしい家のたたずまいで、霜どけの庭が垣のまばらな間から眺められ、新しい二階が出ていて、窓のあいたところからスタンドなど見えました。それを見つけたのは私ではなくて、タカ子よ、なかなかのものなり、でしょう? きいたらば(友の会で)三月から十月まで講習はじめるのですって。家からごく近いし人数もやたら多くないし、三月からならあたたこうなって丁度よい、というし、ラッシュアワーで又バスがひっくりかえったなどと云うのも楽ではないし、きいてよかった、これにしようということになりました。材料の心配も先方でしてくれる由ですから。家から七分ぐらい。歩いて。大変いいわ。そして、野原のタタ
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