の仕事にします。そのためには稲ちゃんのようによそへ行くより、うちの条件をよくしておいてやる方が私として可能ですから、その点も考えているので。まだこまかにプランは立てられませんが。この長篇のことはうれしいわ。力一杯出しきってやりたくていたところだから。短篇はやはり短篇で。前かきかけていたのとはちがう題材でどちらかというと「杉垣」の種類のものです。この間うち云っていた姉弟の小説、ああいうものかいてしまってから、専念とりかかるわけです。たかちゃんは半年ぐらいの予定です。そのくらいあれば洋裁を専門家としてひとのもやれるようになるの。光井にそういう人がいません。ですから自分の将来の家庭のためにも便利ですし、実科しか出ていないというようなひけめもプラスになるものがあって、私たちのしてやれることとしては実質的でしょう。明後日あたり遊覧バスで一めぐりしたら、あとはふつうの生活の間にちょいちょいあっちこっち私と出て、そして黒子もとらないのなら一月の学期から通いはじめればよいと思います。
 一月の中旬ぐらいは私もすこしひまでしょうから、藤江いないでも、たかちゃん出られますから。
 炭のこと、きょうお母さんにうかがって見ました。この頃は、お米や炭のことを、おまわりさんがききに歩きます、戸別に。統計をとっているのです、需要の。うちは冬は炭一ヵ月三俵、米一ヵ月およそ三斗八升ぐらい。今炭は二俵あるきり。たかちゃんは来る人が皆いきなり「お宅では炭は、お米は」というのでびっくりしています。お米も県外輸出がむずかしく自家用でも制限で、どういう工合になるか一寸わかりません。組合もお米に自信はもっていません。しかし何とかなるでしょう、大丈夫よ。大局から云えば、こういう一般の経験も有益です。すこしはリアルになる。
 この頃いやにポール・ブルジェが訳されて、今『愛』というのが送られています、Book レビューしてくれと。この広告に曰ク、「フランスの漱石、鴎外だ」と。二人の、こんなに素質のちがう人を一人にあてはめていうようなひどいことは、文学にはごめんということを先ずかくつもりです。ひどい杜撰《ずさん》さですね。何でもこんな風です。本年の新年号は創作欄保守です。若い作家、婦人作家、実にかいていず、私が二つ小説かいているのが例外です。稲ちゃん一つ、中里、真杉静枝、円地だけ。林でさえ一つ。(文芸)綜合雑誌は中野一人。では又ね。まだ年のうちにかきます、あなたは?

 十二月二十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書 速達)〕

 十二月二十七日  第百十七信
 きのうそちらへ出かけました、玉子つきましたろう? どんな玉子? 丸々として居りましたか? たべられてしまうのだからいいこと。
 さて、お加減はいかがでしょう。私のかぜやっとぬけました。かぜがぬけたばかりでなく、きょうもさっきからしきりに気がついて眺めているのですが、腕や手がいやに白くなくて、薄赤くなっていて、私は随分久しぶりで、こんな自分の腕のつやを見る心持です。白いばかりでいやとよく思っていた、それが血色がさしているの。理研のレバー、それから御持薬、こんなにきくのでしょうか、ともかくこれは結構です、どうか御よろこび下さい。体に十分気をつけて、又よく勉強いたしましょう、来年も。
 従妹というもの、ましてたかちゃんのような子、一緒に暮すにいいものね。そして寿江子より、三つも年下のたかちゃんの方が、ずっと日常のたすけになること考えて、生活についても考えます。この間うちからポツポツ話してね。一月の初旬から洋裁をはじめさせます。二月一杯人をおいて、三月に入ったら、暖くて万事簡単になるから二人でやって、ほかのひとに払う分でたかちゃん勉強しようというプランです。しかしこれもこの前の手紙で申し上げたようなわけで、そのときの事情によります。私の外出が(一日がかりの)多くなれば人はいなければなりませんし。
 きのうの晩はフヂエが会へ一寸かえって二人きりだったので、すこし今度のことしんみり話しました。
 なかなかたかちゃんとしては要点にふれて考えています、将来、自分と対手とがあまり程度ちがわぬように成長して来るかどうかという点を第一に。今までの自分の周囲が余りせまかったことも知って居り、あっちのひとが、すこし負担として考えているところのあるのも知っていて、どうしてよいか分らない、というところです、これは正直なところと思われました。
 強いて、忘れようとすれば忘られない面も浮び上るのだから、マア自然にしておいて、生活の現実をどんどん進めてゆくがよいということにしました。生活そのものがつまりは決定するのですものね。
 あちらでは、ソラ大変、何でもすぐ片づけなければ、と満州あたりに行っている憲兵さんか何かに片づけようとしたのですって。あのひ
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