しましたでしょう? 全集第五巻の方はてっちゃんからまわせそうです、やっと。
 隆ちゃんからも手紙来ましたけれども、このお手紙にかいてあるようなことは一つもありませんでした。アドレスの違いだけは書いてあったが。不思議な偶然でしたね。さぞ感慨があるでしょう。私の方へは例のとおりの文句で只いかにも忙しげですが。林町から二人へ袋送って、私は本月は休むこと前便で申しあげましたとおり。お正月がたのしめるように次の分は心がけて時間もたっぷり見て送りましょう。『北極飛行』承知いたしました。隆ちゃんはやっぱり小国民文庫が気に入りましたようです、丁度いいと云って来ていますから、つづけてあの分を送ろうと思います。
 私の「疲れた」。面白いわね。自分でもこの間迄はっきり心持のモーティヴ、知らなかったのですもの。詩集をひらくというような生ぬるいものではないのです、そのなかに顔を埋めるのです。そんな工合。
 請求書は来ません、よこして下さいと云ってありますが。
 稲ちゃん、友人の結婚の仲人をしたので十六日に式にかえっていて十七日にいたわけです。十八日ごろ又行った筈です。手紙よこさないからきっと仕事に熱中しているのでしょう。三百枚以上かくのに十一月十日ごろ迄とか云っていたが、出来るのかしら。あのひとは私などとちがってどっさり一日にかくから、別でしょうが。
 栄さんも百枚以上の小説をかきました。このひとは実にストーリイ・テラーで、そのうまさは身についていますね。しかしもう一重ほり下げた心持を追う描写になるとだめです。不思議なくらいそっちはだめで、一方がすぐれている。だから題材とそれとがうまく結びつくと、今度のなども読むには面白いのです。そこに又大きい問題があるわけです。私もそれは云うし本人も知っているわけですが。そういうものでスラスラかけてしまう題材は早くかき切るべし、と云っている次第です。このひと、稲ちゃん、自分、皆何とちがうでしょう。稲ちゃんは線のひとですね。
 きょうはおだやかに日が照って暖かですが、私は目下風邪気味で、ハナのなかが乾いたようで眼玉がいくらか強ばって昨夜は夜中おきて湯タンポをつくりました。それでもきょうは大丈夫です。朝から机に向って居ります。
 派出婦さん、お裁縫は下手のようなので些かこまりますが、やたらに、いやにしっかりものでないアンポンだからマアいいと思います。楽しみに
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