ヒ、五信かと思ったら。
 昨日の暑さは一通りでないと思ったら、やはり九十三度ありました。おこたえになったでしょうね。いかがですか。ずっと平穏につづいておりますか?
 けさは早いうちに昭和ビルの伊勢さんのところへゆき、かえりに丸ビルのはいばらにまわってこんな紙みつけてきました。
 きょうは風があって、それでも幾分しのぎようございます。すこし暑気当り気味で左の脚が又こむら返りそうな変な気持。この頃はくたびれるので実に早寝をやって、昨日は久しぶりで一日家居しました。ずっと毎日毎日出づめでしたから。朝八時に出て、家へ六時頃かえる、なかなかくたびれました。ゆっくりとよく休養なさらないと無理であると思いました。それに一日だけもてばよいというのでもないから。くれぐれも大切に、と願います。五十キロでは換算してみたら十三貫すこしですね。十キロはおとりかえしにならなければね。申すまでもないことですが、暑いときは塩の辛いものが案外食慾をすすめます。何とか工夫して、少しずつ食慾の出るように。夏ミカンの汁しぼって砂糖いれてトマトを三杯酢のようにしてあがってみたらどうでしょう。ゆで玉子を小さく切ってまぜて。サラドのようになりますが。そして食パンと一緒に。サーディンを夏ミカンの酢で上ったことありますか? こんなのもどうかしら。あなたは夏は果物の酸を御愛用でしたから、何とかそのこのみを御利用になることですね。はい、といって何か一皿出してあげたいと思います。夏みかんのみをほぐして玉子と砂糖かけて、そこへトマトまぜても上れるでしょうし。いろいろなさるの面倒くさいでしょうね。自分で考える(献立など)ことが出来れば、いわば食慾があるという状態なわけですから。でもどうか御工夫下さい。つめたいものと求めても中途半端ですし、かえって熱いものの方が汗は出るが気分が引立ちます。私なんか氷よりお茶のあついのをのんで居ります。
 明日火曜からどうなさるの。もしこの火木土がとべば、私はその間に図書館通いいたします。早朝に出かけて。図書館でも男のひとは上着はぬげますが、女は帯しめたままですからね。婦人作家でなくては、そして或る健全がなければ書けない展望に立って、この時代の鏡としての婦人作家の歴史だけは十分力を入れてまとめます。〔中略〕
 いわゆる文学的素質というものはない人々によませ、わからせ、そして感じさせてゆく小説、そ
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