スちの場合成功謝礼というものはあり得ないから費用として(手数料として)先云っていた額ならよいだろう、誰でも、ということでした。そして実際そうなのでしょう。民事関係では、例えば、
  目的ノ価額ニ従イ左ノ割合トス
       手数料  謝金
 五百円以下 七分   一割五分 つまり二・二ですね
 千円以下  六分五厘 一割二分
 五千円以下 六分   一割   などですが。

 この次の金曜日、どんな工合でいらっしゃるかしら。あの位髭、久しぶりでしたね。月曜以来もう出ませんか、この間は二人のお話しになったが、あと大丈夫でしたろうか。
 トマト、もし種子がうるさくなかったら、なるたけ召上れね。ぬるくては舌ざわりよくないでしょうが。もし水につけておけたらいいけれども。種子だしてあがれるでしょう? そこだけとればいいから。あのしゃぼんいかがですか、もちろん届いているでしょう? 昨年と同じです。去年は夏のうちに一ヶしか使いませんでしたが、今年は二つつかいましょう、もうつかっていらっしゃるかしら。そんなこと些細とお思いでしょうが、生活のそういうなかでは、快い匂いというようなものは随分薬です。だから私はいろいろに考えるの、甘い匂いがいいかしら、それともスッとしたのがいいかしらなどと。そして、夏あついとき、こういう手紙の紙やインクの匂い、あついでしょう? 私はつかれているとき、原稿紙の匂い、インク、つかれを感じますから。手紙でも、かすかないい薫りを夏は送りたいと考案中です、昔の殿上人のように香をたきしめるわけにも行かないが、何かと思います。どう? おいやではないでしょう? 紙の色だって白でなくてはならないというわけもなし、でもよみにくくてはいやですが。
 きょうの封筒、風変りでしょう、ユリの縞のこのみにやや近い。私は太い縞はきらい。瀟洒なところのあるのがすき。この頃の角封筒のわるくなったことは、本当にびっくりです。
 次の火・木・土はどうなるのか、火曜の前日しらべて見ましょう。昨日は不明でした。妙なところから来ている人々と並んでいるのもすこしいやのようでもありました。呉々お大切に。手紙、本当に当分おかきにならないでね。島田へも達ちゃんたちにもお話のとおりかきましたから。ではきょうはこれで。

 七月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 七月十七日  第六十六信
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