フが、それでもいくらか今思い出されて役に立ちます。
 十五日
 あなたのところからこの頃の日没の空が見えるでしょうか。きょう上落合のところを栄さんと歩いていたら、重く濁った太陽が、低い地上では靄《もや》の湧いた樹々を黒く浮上らせながら沈んでゆくのを見て、シベリアの景色、バイカル湖のあたりや、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の日没を思い出しました。栄さんのところへは、十七日の用でよったの。先月はごたついていてあなたの御誕生は珍しい家内の顔ぶれでやりました。今月の十七日は、お赤飯をふかさして栄さんのところを(丁度小豆島から妹さんとその娘――小さなの――が来ているから)ユリちゃん小母さんの家へ呼んでおひるをたべます。祝いのばしというのはいいこととなっております、古来。
 きょうはおしまいごろに交された話(退院後のこと)あのとき、私は何だか先頃来の点のからかったことの微妙なニュアンスが氷解したような感じがしました。点の辛さを、そのこと自体導き出すものは実際にありました。そして、点の辛さは、有益であり、全体として正当なものであり、私は明かにそれによって精神と肉体との健康をましつつあり
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