の作品が推されている有様。『タイムズ』の文芸附録でさえ、という現実の力の面白さがある。
    ――○――
 志賀直哉の「暗夜行路」は、昨年終りの部分が出来て、前・後、完結しました。前篇、昔の茶色の本でお読みになりはしなかったかしら。
 この間後篇を読み、漠然と、わからないと思うところをもっていたのが、私自身の最近のいくつかの経験や自省によって、その点わかったところがあって、それが話したい。特に語りたい心持がするのは、私が最近経過した内部的な大掃除みたいなもの、或は嵐のようなもののおかげで、すこし古葉が落ちて、ものがはっきり見えはじめた部分があって、そのおかげで、漠然納得ゆかない気持でうけていたものを、はっきり捕え分析し得るようになった。そこが意味深長で、きいて欲しいわけなのです。
「暗夜行路」の主人公謙作が京都で鳥毛立屏風の絵にあるような女(この絵覚えていらっしゃるかしら。大どかな、素直な、気品ある若い女です。裾を左手ですこしかかげているような、元禄風の)を見そめて、そのちゃんとした娘と結婚して、生活しはじめる。その妻である女は、挙止、言葉づかいよさの諸点が現実の作者の妻である婦人
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