八月二十八日  第四十七信
 いろいろのことを書きましたが、もうすこし文学についてのお喋りがしたい。
 賀川豊彦の作品に似た作品というあなたの批評を、この間鶴さんに話したら「フームそうか俺の狙いも相当だね」という意味を云って居ました。谷川さんは『朝日』で、説得力のある文学だとか、教養のための文学だとか云っていて、私はニヤニヤを禁じ得なかった。谷川さんの悧口さと識見の不安定さで、何だかどうもと腑《ふ》に落ちないながら、現在目前でチヤホヤされているものをそのチヤホヤのよって来るところ、並作品の現実にふれて両面から科学的に明かにしてゆく力がないから、処世的なカンを働かして、説得力のつよさなどと云うところをとりあげ、賞める声に追随しつつ、それとは心付かれぬように芸術性の問題はさけて行っている。その点を誰かがとりあげても自身の所説は対象となり得ぬように。昨今の批評精神の典型です。岡本かの子の作品その態度に対しても、谷川という人は、もうそろそろそこらへ評価が落付いた、というときになって初めて、安心したように、それを認めかねると表現する。面白い見ものです。『文芸』か何かの人物評に、「三木清は誰で
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