獄中への手紙
一九三七年(昭和十二年)
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)数珠子玉《ジュズコダマ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)香|馥郁《ふくいく》たる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「くさかんむり/意」、第3水準1−91−30]

〓:欠字 底本で不明の文字
(例)これは芝居のや〓〓をもったかきわりの如し。
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 一月八日午後 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 一月八日  第二十六信
 晴れ。五十一度。緑郎のピアノの音頻り。
 今年の正月は去年とくらべて大変寒さがゆるんで居りますね。そちらいかがですか。お体の工合はずっと順調ですか。畳の上で体が休まるということを伺って、きわめて具体的にいろいろ理解いたしました。何でも、世界を珍しい暖流が一廻りしたそうで、大変あったかい。それで却って健康にわるく、世界に一種の悪質の風邪が流行している由、称して、ヒットラー風。
 私は、今年の正月は余り自
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