ハ白くて仕方がない。藤村の詩など考え合わせると、日本のその時代の文学の地方性=フランス・ロマンティシズムの都会性に対する=が感じられます。私は十二日の朝ここを立ちます。来るのはよいがかえすのはいやだとしきりにお母さんがおっしゃり私もその心持です。いろいろ、お味噌だの、かきもちだの草餅だの外郎《ういろう》だの小さいすりこぎ[#「すりこぎ」に傍点]だの頂いてかえるの。私を可愛がってくれた祖母が田舎から私にくれたものを思い出して、私は大層うれしがって居る次第です。
お父さんは腎臓に障害が起って居ります。やはり順々にそういう新陳代謝には故障が起るのですね。この手紙がここでかく手紙のおしまい。私が、こんな島田川の手紙をかくなんて、なかなかいいわね。では又。お目にかかる方が早いのだから、そのとき他のことはいろいろと。
〔欄外に〕この桜は室積の桜。潮風に匂う桜は大変ここら辺のより豊かに美しいと思いました。
四月十一日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 山口県島田より(はがき)〕
四月十一日。昨夕七時頃野原から電話で、叔父上急に右が痺れて口が利けなくおなりになった由。達治さん多賀子私うちのトラックにの
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