ゥら。今度はその古材木で九尺に三間ほどのものを建てようというのです。
負債のことは、講の片がついて、只今はもう何もタンポに入っているものなし。この決算のことについては三年かかっているそうです。飛田の山崎氏が保証人であったのが、山崎氏もああいう事情で東京へ出てしまわれたので、却って簡単に運ぶようになり、お父さんの旧友で、兼重という七十余の老人が親方の肩入れで、二月七日に万事落着し、五十円ほどのお祝いの宴まですんだのだそうです。お父さんの年金もこちらに戻っています。他にこまかいものが少々あるがそれは五百円ばかりで片がつき、十分ポチポチやってゆく自信がおありの由です。だから、第一の手紙に申しあげたように、私達は達ちゃんの嫁とり条件を少しましにする方向へお手伝いしようとお母さんにお約束したわけでした。
三年前島田へ来たときは、ほんの五六日でした。お母さんをつれてあなたに会わせ申すのが眼目でしたから。その時野原へは夜一寸おじぎに行ったきり。だからきのうは昼からすっかり屋敷の中を見せていただき、私ははじめて真に荒廃したという家の有様に接し、いろいろ深く感じました。あなたは今の野原の家の建ったの
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