は丁度仕事からかえったところ。前の麦畑の麦は一尺ばかりのびて居ます。
家じゅうがいろいろと手入れをされていて、大変明るい感じです。うれしいと思う。達ちゃんはまだかえらず。野原から多賀子さん[自注9]が手つだいに来て居ります。
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[自注9]多賀子さん――顕治の従妹。
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三月二十六日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 山口県島田より(浅野泉邸の絵はがき)〕
三月二十六日 今丁度正午の時報。ラジオは株式をやっています。
きのうは野原の御父上も見え、お向いの御夫婦も見え、兼重さん(山田の)も見え、なかなか賑やかでした。今は野口さんのお父さんが見えています。私のために大変キレイな座布団をこしらえて下すってあり、テーブルも出来ている、何でもあなたが野原でつかっていらっしゃったのというの。そのザブトンは大きいのに達ちゃんか誰かもっと大きいのがよかろうと云ったと大笑いです。毛布も布団もお気に入り、かけていらっしゃいます。いずれゆっくり手紙をさしあげます。
三月二十七日午後 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕
三月二十七日 晴天の
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