ました。偶然手に入ったからお目にかけます。あなたのところでは、夕方エハガキの色など特別|鮮《あざやか》に見えるでしょう?
二月十七日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(封書)〕
二月十七日午後一時ごろ。
南のガラス戸をすっかりあけていると、ベッドの上まで一杯の日光。ものを書くには落付かぬ位です。(私は、春の日光には耐えられないから、眼の弱い故《せい》。床の間をつぶして北に窓をあけようかと思って居ります。)あなたのところにも、体のどこかにこういう日光が当っているのかしら。畳の上だけかしら。日当りのあるところにお移れになったというのは何とうれしいでしょう。何だか私もほっとして楽な気持です。幸福な心持が微かにする位です。
十五日には、ゆっくりお目にかかれてよかった。実によかった。話す言葉や何かのほかに、いろいろうれしかった。何しろ私ははりつめた心でいたのですもの。
お話で、私の生活の雰囲気について一層何かお感じになった理由も察せられました。フランス語の件。私はものを書くのが仕事で、責任をもって書く習慣をもっていても、あなたへものを書くときには、くつろいでいるのかしら。例えば、私
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