チたのは六時。稲ちゃんのところで夕飯の御ちそうになり。ぶらりと時々山や野原を歩くことの必要をしみじみ感じました。少くとも稲や私には実に必要です。くたびれは大したことなかったけれども、眠ったら夢を見ました。シンプソン夫人の旦那様が三越で女の振袖を買っているところでした。
二十七日に渡す原稿を終ってお目にかかりにゆきます。M子、体がもたないので社を一週に二三度出ることにして、原稿だけ送るようにしました。月給は、きょう貰って来るのだが、二十円ならいい方。食えない。うちで食わす。食わすことに異議はないが、私の心持にはそれ以外の重みがかかってこまるから、何とかしたいと考え中です。
掛布団の工合はいかがでしょう。島田へは、もし達ちゃんが召集されると、それからでは間に合わないから、真綿でこしらえたチョッキと毛糸の靴下二つ送りました。お母さんが召すために長襦袢の布。あなたの腹巻のための毛糸、そして明日あたりお母さんに、あなたがこの冬かけていらした夜着をつくり直してお送りします。お母さんは達ちゃんに軟かい夜具をきさせて御自分は私が称して石ブトンというのをつかっていらっしゃる。この冬はお体もすこし疲れ
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