ワす。同一水準で沢山かける、これでは悲しい、我々の年や業績の歴史から云って。やはりのろくても前進しなければ。よく眺めていると、作家でも、日常性というものを健全に把握せずそこへ足を漬けている人はすこし作品が調子にのってつづけて出ると忽ち下らない日常の描写になってしまうのは、実に教訓です。そして、その人々に日常性に浸ることと無条件肯定の誤りを誤ったところで、それはインテリ性という風にだけ感じるところ、何と微妙でしょう。いつかのお手紙に作家の理性をも科学的に育てることその他実に真理であって、しかもそれを自身の心臓で会得することの必要を知っている作家、又知ろうとする作家、実に尠《すくな》い。今日は複雑な理由によって作家センチメンタル時代です。芸術家としての勇気とか献身とかいうことさえ実質不明瞭の感傷でうたわれて居ります。センチメンタルでないとピッタリ来ないと云った風です。こまったものなり。読者のみがセンチメンタルでないところが今日の文学的特徴です。
壺井さんもしかしたら又失業しそうです。鶴さん相変らず。この間の晩皆が呉々よろしくとのことでした。稲ちゃんいそがしくて保田からハガキも上げなかった
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