ノ一寸もたれ込むものをもっている人々は、暫く風をいなす気でそこにもたれて遂にえらいことになる有様です。私は幸、乱作ではない多産の時期に入って来たらしい様子です。本当に仰云る通り完成をしきった段階というものはないのだし、自分なら自分というものに現れている過渡性が、どういう歴史性を語っているかということが客観的に把握され、その意味を客観的に評価出来るところまで力をつくして生きて居れば、自身の所謂未完成をおそれる理由はないのです。
 現在の私は仕事の軽重をよく見きわめて整理して、基本的勉強を怠らず、体を気をつけて、仕事と休養のバランスをつけることです。私たちの生活が段々深められ成熟して、二人をおく条件に阻害されることが益※[#二の字点、1−2−22]減って来るということは何という歓びでしょう。私たちはこうして自分たちの不動な幸福をつかんで行く。そしてつかんだものは決して手離すことなく豊饒になってゆく。ユリのそのキャパシティーを鼓舞して下さい。
 おみそ汁が買えることは知らなかったからああそれはよかったと、口の中にいい味がした。沢山は発酵するがすこしずつはきっといいのではないでしょうか。私がこ
前へ 次へ
全235ページ中153ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング