いろと又身にそえて分ってきたことがあって、私は心からあなたにお礼を云いたいことがあるの。あなたが、一つ一つと私たちの本質的な生長のために必要でないボートを私にやかせることが、どういうことかという真価が次第に明瞭にわかってきて――自分の生活感情に新しく加って来る推進力の新しい発見の面から分って来て、私はそのことについて心のもっとも深いまじめなところから、改まってあなたにお礼を云いたい心持なのです。私はどのボートがない方がいいかを洞察し得るものは、私をその上に泛べている広い、たっぷりして活々した愛情なのであるから、その意味でも私は何だか鞠躬如《きっきゅうじょ》とした気持になる。この頃私は自分たちの中にあるそういう貴重なものに思い及ぶ時、感動から涙をおとすことがある。自分たちの生きてきた五年の歳月というものの内容を考えて。――普通のもののけじめで五年が一区切りになるばかりでなく、今年は私の生涯にとってなかなか一通りでない意味をもつ内的な問題が発展させられた年でした。
あなたには私がこんな妙な切口上のようでお礼を云ったりするの、おかしいかもしれないが、笑いながら、ユリのばかと笑いながら、や
前へ
次へ
全235ページ中139ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング