ヘどうせなれないが、平衡を保つことは可能です。それを目ざすことは絶対に不可能ではないのだから。気をそろえてやりましょう。私の知識、私のマメさ、私のもつその他すべての資質が、そのために最小限にしか活用されないのは何と残念でしょう。自分の体の内が苦しいように苦しいのに、それを直接には最小限にしか表現しないで、仕事をしてゆく心持というものを、きのうきょう味っています。これは或る意味で新しい経験ですが、私は決して悄気《しょげ》はしないから御安心下さい。只まだ非常に生々しくてそれに馴れない。
さて、野原には黒檀《こくたん》の五十円の仏壇を送りました。本当は金ピカなのだろうが、記念の品を納める心持にふさわしいような、但シ格に従ったよい品です。冨美ちゃんには浴衣《ゆかた》と思ったがやめてお金にします。島田を手伝っている多賀ちゃんに浴衣。父上にはいろいろの食料のカンづめと果物のカンづめ。
私はこの手紙が着かないうちにお目にかかりにゆくでしょう。あんな苦しそうに立っていないでよい方法はないでしょうか。いろいろのことが、もっともっと体の細かいことが気になるから。きょう稲ちゃんと一緒にあなたの夏のかけ布
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