オ、自分に与えられる賞讚や批判の中からむだなく養分を吸って育ってゆく、その生活感は何とよいでしょう。自分の努力、自分の熱心、そういうものが、とりも直さず真心からの愛と一致し、その具体的な表現であるとさえ感じて(その経験と摂取において、自分の目に入れこになっている眼を感じて)、信じて生活してゆけることは、何と貴重なよろこびでしょう。私を努力させる力、私を生かしている力、それは何という根づよい強健なものでしょう。抽象的に書いて何だか妙だが、おわかりになるわね勿論。私が絶えず探し求めていて、自分を一層ひろげたり強めたり本ものに近づけたりする小さいキッカケでもピンと来たときどんなに私はあなたと共に其をうれしく思うでしょう。ありがたいとさえ思う。つまりこれらすべてのことは、私が比較的健康の工合もよくて、心が情愛に満ちていて、仕事にはり切っていて、その仕事を一つ一つあなたに、全く、実に、ほかならぬあなたに見て貰いたく思っているということなのです。こう書くと何だか暑い盛りに一層あつっぽい息をかけるようですみませんが、でもこれはあなたの不幸にして幸福な良人としての義務だから、生かしているものの義務だか
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