サれを届けて、国男寿江と落合って、市ヶ谷へ行って夜具をとって来ました。ひどくなりましたね。あなたの御病気との悪戦苦闘を何だか感じるようでした。この次は、ああいう厚ぼったいのでない方が却っていいのではないかしら、綿が切れないで。いずれ又それは御相談いたしますが。
 そちらはきっと当分いろいろ落付かないでしょうね。中川にははり出しが出て居りました。それでも何だかどんなところかしらという気がして居ります。今の予定では十日頃まで大変いそがしいからそれがすんで、そちらもお落付になった頃――二十日頃お目にかかりに出るつもりです。この間は、おそくなって差いれが出来ませんでしたから明後日ごろさし入れだけにでもゆくつもりです。もし都合がついたらお目にもかかりますが。――
 お体はいかがですか。今年の梅雨は早い。私は徹夜廃止の励行で大分よいらしい様子です。※[#「くさかんむり/意」、第3水準1−91−30]苡仁《ヨクイニン》もききます。二日ばかり前お母様からお手紙で、お父上の御様子がましになったお話しです。何よりです。食事もお進みになる由。野原の家は整理までずっと住んでいらっしゃることになり、おせむさんの弟さんが同居なさる由。お葬式のときお目にかかっているだろうけれどもよく分りません。
 今日、私は少しポケンなの。くたびれていて。今月は仕事がつまっていて、きのうまでに百四〇枚ばかり、一つも口述なしで書いた。このうち相当勉強したものが百二十枚ばかり。マリアの日記は千五百頁あるのを二日でざっと目をとおし。――
 それでも、これだけ仕事の出来るのは、私の毎日が珍しく順よく運ばれていることのしるし故、その点本当に安心していただけてうれしい。(そして、テツヤしないのですよ※[#感嘆符二つ、1−8−75])
 おひささんという娘はいい子です。自然ですなおで日常に必要なだけ頭もよい。徹夜しないでやるのがうれしくて。うれしくて。その代り、今月は戸塚へ二度、壺井さんへ一度、林町へ一寸一度、座談会一、映画(3)[#「(3)」は縦中横]、音楽(1)[#「(1)」は縦中横]という位です。音楽のいいのがききたくて。私はどうもラジオや蓄音器の電化音が耳につらい。どういうのでしょう。下手でも生《なま》を欲する。ゆうべは本当に生《なま》がききたかった。ゆうべは珍しく非常に物語のあるしかも痛切な私たちの夢を見ました。そ
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