うは、先月のときから見ると、やっとあなたらしいお顔つきでした。窓があいて、一寸のり出すようになさったとき、少しよくなっていらっしゃるのを感じました。それにしても、先月は苦しかったのですね。よっぽど立っているのが無理であったに違いない。どうか、これからは、きのうお話のように少し無理そうなときはわざわざ出て来ないで会えるようにして下さい。その方が私はずっとずっと安心なのだから。
けさ十一月二日づけのお手紙をありがとう。書く日がずっていることを知らず、二三日随分待って居りました。私の仕事のこと、又療養のこと。こまごまとありがとう。具体的にたのまれなければインスピレーションを実現しないとお笑いになったって? なかなか辛辣ね。ひどい! と思いながら思わず私もニヤリとしてしまいましたが。作品によって過去の作品を克服してゆくということは、全くです。私は、評伝風なものとしては夏からかかっているのをすっかり完成させたら、漱石その他にはすぐかからず、来年は主としてずっと長篇にかかります。作品そのもので、題材と主題との関係で今私がとりあげたく思っている諸点、芸術化されるべきであると思っている諸世相を書いて
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