ても四月以後今日までに私の体の事情に合わせれば、相当の勤勉さです。時間のつかいかたをもっと巧みにすることと、それは私を徹夜から防ぐためにどうしても必要です。全く私は変なウシミツ時にあなたに喋りかけては、計らずしっぽを出してしまいますものね。(でも私は小さいしっぽであろうが、大きいしっぽであろうが、あなたにはお目にかけずにいられないのだから、どうぞあしからず)
 私は年に一つは本の出来るだけに働くプランです。今年は或は暮れに近づいて二冊出るかもしれません。評伝と別に白揚社が感想集を出すと云っているから。――
 ところで、ここでの生活ぶりについて何と書きましょう。――私としては珍しい表現でしょう? つまりこれは、落付こうと努力しつつ落付けずにいるということになると思います。
 ここの自然は実によくて、或はそのために落付けないのかしらとも考えます。きのう迄は部屋の都合で落付けなかった。丁度山々では紅葉《もみじ》が赤らむのでね、善光寺詣りの団体くずれが、大群をなして温泉めぐりをやり、渋《しぶ》からこの上林へとくり上って来る。それらの連中はこの家から少し上の上林ホテルというのにつめこまれるが、こ
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