。この頃は時候がわるいらしいから呉々お大事に。こんな空を見て臥《ね》ているのは残念ですね。
九月七日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(山下新太郎筆「東山と萩」の絵はがき)〕
九月七日夜。今夜八日ぶりでお湯をつかい、お茶をのみに食堂へ来てこれを書きます。私の体、御心配をかけましたが、単純な疲労が重ってひどくこの残暑でやられたらしいのです。ひどく汗が出て出て、皆に、お前がたこんなに汗が出るかと訊いていたうちに疲れを重ねて居たのだったらしい様子です。御飯もきょうからたべます。背中の痛いのもすこしましになりました。栄さんがよく来て電気をかけてくれます。きょうは稲ちゃんも見舞いに来てくれ、ゆっくり休むよう呉々も云ってくれました。どうかそちらでもお大切に。
このエハガキはもう四、五年以前のもののようです。二科や院展がはじまったから新しいエハガキを御覧にいれましょう。南画会が小室翠雲と関西派との衝突で解散した由。残暑をお大切に。本当にお大切に。
九月十一日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(青鉛筆書き 封書)〕
九月十一日 第十一信
きょうはひどく風が吹くので暑さが乾
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