ように。トマトはまだでしょうか。おかゆのお弁当を一ヵ月つづけておきました。朝牛乳、玉子二つ、一つはナマ一つは半ジュク、御注文のとおりいたしました。本のこともすぐ計らいます。どうかくれぐれもお大切に。お元気なのは分って居りますが家のもの、友人たちは本当に心配して居ります。全体として体力を蓄積なさることが大切ですから、読書なども平常よりは用心してなさいますように。
 皆からよろしく。きょうの太郎は眠くって失礼。でも思いがけなかったでしょう。

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[自注1]中條咲枝より――発信人は咲枝となっているが、百合子が書いている。前年五月中旬検挙された百合子は、十月下旬治安維持法によって起訴され、市ヶ谷刑務所未決に収容された。一九三六年一月三十日、父中條精一郎が死去した。百合子は五日間仮出獄した。ふたたび市ヶ谷にかえり予審中、二・二六事件が起った。三月下旬、保釈となった。百合子は慶応病院に入院した。保釈の際、判事は二・二六による戒厳令下の事情によって百合子の公判が終了するまで顕治への面会通信は控えるようにといった。
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 六月二十六日 〔市ヶ谷刑務所の顕治
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