のフチを一まわり大きくして、レンズはツァイスのウロ・プンクタールというの。これは赤外線、紫外線を吸収して人工光線の下で仕事をするのに大変疲れないのだそうです。大奮発です。でも眼玉ですものね。そう云えば、私のこれを書いているテーブルの上には、馬の首のついた中学生じみた文鎮のわきに明視スタンドが立っているのです。そのことをまだ書きませんでしたね。そっちで『科学知識』をよんだらスタンドの科学的光度のことが書いてあって、明るく視るスタンドが科学的な計算によってつくられたというのを知りました。あの暗いところで、そういう知識を得ました。家へ帰って真先に買ったのはそれ。三段に光度が変えられ、柔かい光がいい心持です。こんどはそこへレンズがとび切りとなって、おお、おお、ね。私どんなに勉強しなければならないか! ですね。この次お目にかかるとき、私は今日の世界の科学の最も新しい成果であるレンズをとおしてあなたを見るのですが、あなたはこの手紙をおよみになる迄気がおつきにならないでしょうね。あのところで、私たちには眼鏡のことまでを話しているひまがないもの。あなたは近眼におなりになりませんか。大切にして下さい。無
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