のところがすっかり飛び、土曜日は、『文学評論』の用でだめでした。どうぞあしからず御察し下さい。
 差入れの本は、いたって無秩序にしか入れられないですみませんが、こちらもこの頃段々様子がわかって来ましたから次第に工合よくなると思います。
 この間の世界地図は、ひどいのでしたが、無きには増しと存じ、いまにもっとましなのを買ったらとりかえましょう。語学の本はもうつかっていらっしゃいますか?
 坪内先生が死なれて、私はあちらこちらから感想をもとめられましたが、先生と私との間には所謂師弟としての絆《きずな》は浅くあったし、年の差以上の差が互の歴史性の上にあり、『文芸』にそのような短いものを書いたきりです。坪内先生の生涯を考えるにつけ、様々の教訓があるが、後進に対する包括力のひろさということ、客観性ということの重大さを深く教えられる。抱月が坪内先生の常識的モラルにあっては包括され得なかった点など、ね。面白いと思います。早稲田出の代議士が勲一等を貰ってあげようとしたがことわったことは、又先生の賢さの一面でしょう。白鳥が坪内先生によって文学の道を学んだのみならず、生死に処する道をも学んだと云っているの
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