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とたずねてやって居たけれども、小さい弟共の事などを思うと、思い切って中に入って見る事もしかねたし又骨だった顔を見る事もつらかった。
牛乳と、スープと重湯を時間をきめてたべさせるさしずに主婦は常よりも余程いそがしいらしかった。
只猫可愛がりになり勝な二十七になる女中は、主婦がだまって居ると、涼しい様にと、冷しすぎたものを持って行ったり、重湯に御飯粒を入れたり仕がちであった。可愛がって、自分の子を殺して仕舞う女はこんなんだろうと思うと、只無智と云う事のみが産む種々雑多のさい害のあまり大きいのを怖ろしがらずには居られなかった。
十二三日目になった時、様子を見に行った主婦は、気味悪く引きしまった顔になって帰って来た。
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どうも面白くないねえ。
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物を書いて居た娘のわきに座りながら云った。
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どうして。
「まるで声が変ってしまって居るのだよ。
それにもう疲れて便所へも行かれないんだって、
だから、どうしてもチブスなんだねえ。
でも考えて見ると、去年お前が悪かった時なんかは九度以上の熱が十
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