ルジョア・地主的反動文化の重しで、低く圧せられたままに放置されているのを見る。而もわれわれが猛烈に、決然と、婦人大衆を低く繋ぐ反動文化と戦闘を開始しないことは、とりもなおさず日本におけるプロレタリア文化運動全体を、その重要な一部で同じように低く、重く、敵の杭《くい》につなぎとめて置くということになるのだ。

 われわれの生きている今は、どういう時代であろうか?
 満蒙事件をきっかけとして、ブルジョア文化は、実に急激に、露骨に反動化しつつある。未組織の文学愛好者、特に婦人の間に多くの読者をもっている三上於菟吉、直木三十五などというブルジョア作家たちは手をつないで軍部の雇作家になった。
 われわれ婦人大衆はブルジョア地主の利益を守るためにだけされる帝国主義侵略戦争には絶対反対だ。肥料さえ買えぬ農村の四苦八苦の生活の中から稼ぎ手の若者を奪いとられて、われわれはどうする?
 戦争になったからと云って、三百万の失業者は決してなくならぬ。益々労働条件は悪化し、戦争準備の金輸出再禁止で物価は三割がた上り、肥料の価さえ上った。賃銀は決してそれにつれて上らない。相場師と地主との庫で、米価はつり上げられるが、その米を辛苦して作った農村には何がのこされているか。朝鮮、台湾の殖民地で搾られる大衆の暮しは話のほかだ。
 プロレタリア・農民の階級的攻撃を挫くために、支配階級はありとあらゆる文化機関、印刷物、ラジオを通して戦争熱を煽っている。ストライキと農村争議は、挙国一致の時という名目の下に今までより一層惨酷なる白テロで潰される。
 支配階級のファッショ化に抗して日本のプロレタリア・農民は決意的闘いを闘おうとしているのだ。
 こういう切迫した情勢の下に、三月八日の国際婦人デーは迎えられようとしている。今度の婦人デーは、世界の、とくに支配階級のファッショ化、帝国主義戦争、反ソヴェト戦争準備と闘う日本プロレタリア・農民にとって、画時代的意味をもっている。決して、プロレタリア暦の上の形式的一カンパの日ではない。メーデーを目ざして、われわれが反動支配階級の文化にたいして決定的闘争を高めてゆく、その血の通った一環として理解されなければならないのだ。
 例えばプロレタリア・農民の男が、ファシズムに抗し、帝国主義侵略戦争に反対して勇敢に起ったとしても、階級の半数を占める女が、処女会その他の反動文化団体の影響
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