を病院へ入れる評定にとりかかった。主任が両手をポケットに入れてやって来て、
「どんな工合かね」
というから、自分は待ちかねていたと云い、若し病院が面倒なら、斯う斯ういう病院へ紹介していいからと、せき立てた。
「ふむ」
未練そうにもう一度病人を見下し、出てゆく。次に部長が来て、同じことを繰返す。係りの特高が来る。困ったねエと金歯を出していう。そして、その辺を歩いて、出て行く。丁度、じりじりと悪くなるのを番していて、とことん[#「とことん」に傍点]になるのを待っていると云うようである。
午後一時頃やっと決心したらしく主任が来た。
「じゃもうすぐ入院するようにしるから」
済生会病院へ行くことになった。特高が、フラフラの目を瞑《つぶ》っている今野を小脇に引っかたげて留置場から出て行った。
(附記。後で分ったことであるがそこの済生会病院では軍医の玉子が治療をした。そんな命がけの手術をするのに、そこを切れ、あすこを切れと、指図されるような不熟練者が執刀した。手術後、ガーゼのつめかえの方法をいい加減にしたので、膿汁が切開したところから出きらず、内部へ内部へと病毒が侵入して、病勢は退院後悪化した
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