く、ほんとに生き、心のある自分の仲間が、いるなら出て来、手に触り、倶に笑い、泣き出来るのではないだろうか。
 おせいは、このまま眺めていたのでは、いつになっても正体の見極められない欺瞞に面しているような不快を覚えた。
 小関は彼等を往来に遺したまま、まだ酒気の失せ切れない瞼をぼってり燈に照しながら、薄羽織の裾を揺すって格子の内側を歩いている。



底本:「宮本百合子全集 第二巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年6月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第二巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
入力:柴田卓治
校正:松永正敏
2002年1月7日公開
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