午後
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)暮《くれ》
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昨夜おそく帰ったので私は昼近くなるまで、何もしらずに赤坊の様によく寝込んで仕舞った。
弟共はすっかりそろって炬燵の囲りに集って、私の寝坊なのを笑って居る処へ眼を覚した私は、家が飛んできそうに皆が笑うのにびっくりして、重い夜着の中から、
「何? 何なの
ときいた。
「あんまりよく寝るから
隣の部屋で外出の仕度をして居た母が、
「幾度起しても、起きないんだもの、
死んだのかと思ったよ
と云うと、私と二つほか違わない弟は、
「ゆすぶっても返事もしないんだ、
あんまりひどいや
と大人の様な声を出して笑って居る。
枕元に新らしい雑誌が来て居る。
着物を着かえて食堂に行くと一しきり、皆があたったらしいストーブの火が、もう消えかかってくすぶって居る。
牛乳を一杯飲んで雑誌を読んで居ると母はもうすっかり仕度をしてしまって大きな包をもって、
「一寸行って来るからね
と云って前の廊下を行く。
「今日は随分お早い事だ、
何故こんなに早くいらっしゃるの
「お午すぎだよ、
お前の様ではさぞ日
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