が短かかろう
御殿山に居る身内と芝の母の実家へよると云って出て行った。
今頃起きて、起きるとすぐから本にかじりついて居る自分がすまない様な気がした。
一番末の弟は、羽子板をもらって子供部屋で、遊ぶ事のすきな兄と羽根突――弟の云う「羽根たたき」をして居る。
一番上の弟は書生部屋に行って何か作って居る。
家の中が随分としずかだ。
家敷町で、この近処に何もそう、せわしい商売をして居る家もないので暮《くれ》らしい気持もしない。
二三年前までは、お正月はかなり嬉しいものだったけれ共此頃は一寸もうれしくはない。
年をとるのがいやだと云うわけでもないけれど、何にも出来ないで、只わやわやと七日位たって仕舞うのがいやになった。
別に学者振るわけでは勿論ないけれ共、ふだん割合に自由な時間を少しほか持たない私は、一日でも、二日でも、勝手にすごされる時が大切に感じられるからである。
母は、私をよく知って居るので、休の時などに、用を多くさせる事等はしないでくれるけれ共、暮と云えば自分から気が落つかないで、母がせかせかして居るのを知らん顔で居るわけには、たのまれないでも出来ず、やっぱりせわしい
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