同)  一八・四
 宗教家(同)     四・八
 紳士及紳商      九・六
 商人、組合の親方  三二・一
 富農とカザーク   二五・五
 其他         三・三
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 どこの国でも同じだ。金のある商人は息子がやがて立身して、より大きな権力者になるように、富農の親父は大地主になった息子を夢みて学校へ入れていたのだった。
 一九一七年の「十月」は、ロシアじゅうの学校を、ソヴェト同盟全土の学校を、しっかり自身の階級のものとして掴んだ。ソヴェト同盟の学校は、第一列に労働者の子弟を、農民の子供たちを、勤人の息子や娘を入れる。本当にソヴェト同盟の社会主義建設に役に立つ勤労者をつくるところにしたのだ。
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ロシア共和国における高等専門学校学生の出身分布
          一九二七年  一九二八年  一九二九年
 労働者と其子弟   二八・七   三四・六   四二・三
 農民とその子弟   二二・二   二四・四   二五・一
 勤人とその子弟   三三・〇   二五・〇   一九・七
 知能労働者     一二・五   一四・〇   一一・三
 その他        三・六    二・〇    一・六
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 五ヵ年計画とともに現れたこの愉快な労働者・農民の階級的飛躍は直ちにソヴェト役員としてソヴェト政権に参与する労働者農民の数の増大と切っても切れぬ関係にある。
 同時に、生産の場所における労働者、農民出身の専門技術家の数が増すのも当然だ。
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労働者百人に対する技師・技術家配分率
 一九二八年   二・五〇パーセント
 一九二九年   二・六六パーセント
 一九三〇年   二・八四パーセント
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 確実に、労働者、農民出の技師技術家が殖えている。しかし、この率は、ソヴェト同盟における生産面の拡大に比べると、とても足りるものではない(五ヵ年計画の年度予定では、例えば第二年目には工業総生産五パーセント増大を期待されていた。ところが、ソヴェト同盟の労働者の社会主義建設の熱意は、その予定を追い越して二五パーセントの増大を示している。金にすると二年間に、百二十四億七千六百万ルーブリの工業生産予定を、百三十七億六千四百万ルーブリまで高めた素晴らしさなのだ)。
 社会主義的生産にあって、少数の技師だけが卓抜ならいいという事は決して云えない。あらゆる勤労者の技術水準が、去年よりは今年、今年よりは来年と高められなければならない。そのことについてはスターリンも頻りに云っている。
「再建設期に於ては技術が一切の問題を解決する!」
 労働者、農民の技術向上については、実に切迫した必要があるのだ。何しろ、五ヵ年計画の初め、ソヴェト同盟には五十万の失業者――未就業労働者があった。五年間にその半数を生産の中に吸収出来ればよいと予定されていた。ここでも亦、愉快な予定はずれが生じた。――生産の予想外の拡大は予想外な速度で労働力を生産の各部へ吸い込んでしまった。失業者はソヴェト同盟から消えた。これまでは、未就業労働者に職場割当てを任務としていたソヴェト同盟内の職業紹介所の仕事は性質がかわって来た。労働者の合理的配給所とならなければならない。
 一九三〇年の冬、世界じゅうの注視の的となったソヴェト同盟内の重要な地位にある技師、学者、役人等による大反革命陰謀、産業党の例を見ても、プロレタリア階級の技術家がどんなに大事かは明瞭だ。
 ロシア共産党は大会において、生産組合、労働組合は直接工場、学校、農場で、技術家、熟練工養成のために、あらゆる支持を与えている。
 五ヵ年計画が着手された当時、最高経済会議の調査によると、熟練工、不熟練工の比率はこうだった。
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熟練工    四一パーセント
不熟練工   五九パーセント
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 それを五ヵ年計画によって、一九三三年の終りまでには熟練工六〇パーセント、つまりドイツ、アメリカの技術水準まで高めようとしているのだ。
 一九二七年度の技術学校卒業生を、産別、出身、ロシア共産党所属率とわけて見るとこういう工合だ。
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 産別    労働者出身率 ロシア共産党及青年同盟への組織率
工業(昼間)  二四・六   二〇・七
〃(夜間)   七二・五   四〇・〇
農業      一〇・二   三八・七
教育      一三・八   三九・九
医業      二三・六   一七・〇
経済生産    一五・五   二九・七
芸術      一〇・一    五・五
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 現在工場に働き、しかも正常な予備教育はうけられなかった労働者、農民が最も大多数包括されているのはソヴェト同盟の労働科だ。
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労働科学生中ロシア共産党への組織率(一九二八年)
     ロシア共産党  青年同盟
 昼間   三二・一   四七・三
 夜間   三三・八   四〇・六
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 一九二九年には十一万三千人あった技術家、熟練工を一九三三年にはその殆ど四倍、四十三万五千人余にしようとする。
 既に、千五百十二の中等学校(学生十五万四千)のうち七百四十三校が工芸技術学校となった。工場学校は百二十万人の溌溂たる勤労青年に、より高い技術を授けつつある。
 農村の青年もすててはおかれない。十三万八千人の農村青年が、社会主義農業建設のために千二百十六の学校で勉強している。
 彼等の中には、三十万人の労働通信員、二百三十九万三千三百六十三人の青年同盟員が働いている。
 彼等は階級の鍛冶屋だ。世界の労働者、農民の解放、ソヴェト政権の確立に向って、力強く槌を、コンパスを、トラクターを動かしているのだ。

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――輝かしい少数民族の生活――
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 ところで、このような素晴らしい文化建設はソヴェト同盟内の少数民族の日常生活を、どんな工合に変えているだろうか。
 誰でも知る通り、ソヴェト同盟は地球の六分の一を占める大国だ。北は北極から、南は砂漠。そこには綿が生え、駱駝《らくだ》しか歩けないような地域までひろがっている。ペルシャやアフガニスタンはすぐ隣りだ。蒙古と国境がくっついている。その中に、二十五の人種が棲んでいる。ロシアとひとくちに云っても、例えば第十六回ロシア共産党大会のあった時分のモスクワの街を歩いて見る。
 赤いネクタイのロシア人のピオニェールが歩いてく後から、日本の木綿縞の長ドテラを引っかけたような装のウズベーク人が、長靴でノシノシやって来る。
 長い下髪を赤い布で飾った小柄な女は馬乳で有名なクルムィク人の婦人代表だ。
 颯《さ》っと短いマントに短剣を吊って、素早く胡瓜売りの手車の出ている角を曲ったのは、舞踊で世界的名声のあるカザークの若者だ。
 ホテルの食堂で、英語、ドイツ語がロシア語と混って響くばかりでない。喉音の多い東洋語が活々とあっちこっちで交わされる。――
 十月革命が、各民族の根本的な自立をさせるまで、ロシアの中のこれ等の少数民族はどんなに暮していただろうか? 遠い例はいらない。トルストイのコサックや傑出した短篇「ハジ・ムラート」を読むだけでいい、帝政時代の権力は、自分たちをこやすために搾取するための植民地、属国、だましやすい辺土の住民としてだけ彼等を思い出した。
 コーカサスの雄大極まりない山嶽を南へ縫ってウラジ・カウカアズから、スターリンの故郷チフリースまで、立派な自動車道が通っている。今日そこを走るのは、労働者・農民の陽気な観光客を満載した遊覧乗合自動車だ。が、道普請は、昔そのためにされたのではない。軍用だった。帝政ロシアの権力が武力で、絹、皮革の産地チフリース、石油のバクー市を掌握するための近路として拵えたものなのだ。
 近東の少数民族の大衆は、灼けつく太陽の熱や半年もつづく長い冬の中で原始的な手工業、地方病と、封建的地主、親方の二重の搾取の下で、極めておくれた文化をもっていた。
 自国語で読み書きすること、著作すること、芝居することまでを禁止され、どうしてのびのびした文化が育てよう! 学校がたまに在れば、それはロシア語でだけ教えた。
 赤旗はヤクーツクにも翻った。チェルフスの村にも村ソヴェトが出来た。少数民族の大衆は殆ど信じられない勢で、植民地人民としての奴隷の境遇と、封建的搾取から解放された。
 進歩的な婦人たちは、初めて大っぴらに家族制度の圧迫と戦うことが出来るようになった。今は彼女たちも、ソヴェト権力に護られた婦人社会成員なのだ。二百八種もの民族語の新聞が刊行されるようになって来た。
 僅か三パーセント位しかなかった小学校入学率は、全ソヴェト同盟の文化水準向上につれてドンドン多くなって来た。五ヵ年計画で八歳からの全国学齢児童の国庫負担による就学は、勿論、各民族共和国、自治国を包含してのことだ。
 階級的技術を高めろ! というスローガンは、ソヴェト同盟全土に響き、実現されつつある。党婦人部は、労働組合と協力で、各民族に独特な手工業を中心とする婦人の婦人手工業組合、婦人技術講習会等を組織した。そこで、婦人たちは、先より上手に絨毯を織るように、編物をするようになったばかりではない。生産が社会主義的にやられれば、勤労者に得だという事実を学んだのだ。
 一九二六年に、ソヴェト同盟内の各民族の男女がどの割合で読書きを知っていたか。これは人口千人に対しての調査だ。
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 民族別         男     女
ロシア         三七六   三三九
ウクライナ       五六七   二七七
グルジア        四五八   三三一
白ロシア        五二〇   二三一
アルメニア       四三五   二四二
トルコ         一三八    二三
ウズベク         六三    一〇
トルクメン        四二     二
ドイツ人(ロシア居住) 六一二   五九二
朝鮮人(ロシア居住)  五五三   二九一
タタール        四一六   二五七
チュバーシ       四八五   一六五
モルダヴァーン     四三一   一二二
バシュキール      三四六   一四八
ブリヤート       三六九    九三
アブハーズィ      一七八    二五
カザーク        一二五    一一
ヤクート         九九    二三
ダゲスタン       一〇九    一二
キルギース        八四     三
タジック         三九     三
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 ロシア共産党員は全部で百六十六万四千八百五人だがどの位の民族別の率で加入しているか。
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 共和国別      党員数  一万人の成人に対する比率
ロシア共和国   一一三五三一二    一九七
ウクライナ     二四六七〇五    一四七
白ロシア       三五二七四    一二六
ザカウカアズ     八六一五七    二七一
ウズベクスタン    四〇三一八    一二〇
トルクメンスタン   一〇二五一    一六五
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 こんな工合だ。砂漠と根雪の上に文化の光がさした時、そこにはハッキリその文化をもたらした原動力プロレタリア、農民のための階級的指導力が根をおろしているのだ。
 この表でも分るように、例えば婦人の文盲率の最も高いトルクメン、キルギース、ウズベクでさえ、一九三〇年の夏、モスクワで演劇オリムピアードが開催された時はどうだったろう。これらの民族の国立劇団が、自分たちの地方の生産、これを中心として行われる階級闘争を主題にした脚本をもって、やって来た。そして、幼稚であるにしても特色のある演技で大衆的喝采を博した。
 然し、いずれにしろ広大なソヴェト同盟だ。
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