辺土地方には、まだ沢山文化向上のための不便がある。鉄道の沿線へまで二日かかるところに住むような勤労者は、講習会へ出かけると云ったって大変だ。そういうときはどうなるだろうか。
 心配無用だ。社会主義のソヴェト同盟では「生徒が学校へ行かなければ、学校が生徒のところへ行かねばならぬ」。通信教授だ。五ヵ年計画とともに責任ある通信教授網はひろげられる。百六十万人の講習生が教育あるようになる。

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――ラジオを階級のために――
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 新聞はよめない婆さんも、ラジオでならスターリンの演説もきけるというものだ。
 五ヵ年計画はこの階級的文化の声を、都会の勤労者住宅居住者五〇パーセントに、農村では三五パーセントの農戸へ響かせる計画だ。つまりラジオ拡声装置所は集団農場の拡大につれ二万四千から五万千ヵ所に、聴取者は二百万人だったのが四百万人になろうとしている。
 次に見落してならないのは映画館の増大だ。五ヵ年計画の初めシネマ館は一万五千三百あった。ここにも晴れやかな拡張だ。今に、ソヴェト同盟勤労者は、労働組合の手帳を見せて買う半額切符で楽しく映画を八万七百ヵ所で見ることが出来るのだ。
 文化基礎が大衆的に、こう拡大してこそ、初めて輝しいプロレタリア芸術が花咲くのだ。
 ソヴェト同盟の芸術家は、作家も俳優も映画製作者も、そのことは骨の髄から知っている。だから、例えば、国庫負担の全学齢児童就学の問題が起った時、作家は決して引っこんで小説だけ書いて納ってはいなかった。いろいろな本で、講演で、未来のプロレタリア文化の建設者を送り出す土台として、全学齢児童就学を支持し、鼓舞している。
 ソヴェト同盟の労働者、農民は社会主義生産を高めることによって、自身の文化を驚異的に高めつつある。ところが、階級が文化的に高まれば高まる程、彼等が知るのはその様に文化的発展を遂げさせる基礎としてのソヴェト同盟の社会主義生産の価値だ。愈々社会主義的生産の技術を高めようとする。かくてより高く、高く!「五ヵ年計画を四年で!」これは全く正しい生産と文化とをこの地球にもりたてようとするソヴェト勤労者の心からの叫びなのだ。[#地付き]〔一九三一年十一月〕



底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年9月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
   1952(昭和27)年12月発行
初出:「ナップ」
   1931(昭和6)年11月臨時号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2002年10月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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