ト同盟の本屋の内部は質において社会主義的に一躍した。学問は、本はプロレタリアート、農民、一般勤労者の日常必需品だ。その階級的武器を、出来るだけ正確に、出来るだけたやすく、みんなの手に渡らせよう! そういう積極的な意志がありあり感じられた。
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――文盲は勤労者の恥だ――
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大体、革命までロシアは世界で有名な文盲率の高い国だった。帝政ロシアの支配者たちは搾取に反抗されるのがこわくて、勤労者には高い税で政府が儲けることのできる火酒と坊主をあてがってばかりいた。農村、都会とも、小学校はギリシア正教の僧侶に管理された。貧農、雇女の子供は中学にさえ入れなかった。猶太《ユダヤ》人を或る大学では拒絶した。
「十月」は、翻る赤旗とともに、すべてこういうプロレタリア、農民への重石をはねのけ、猛然と文盲撲滅をはじめた。工場の中、兵営の中、農村、町、ソヴェトの中、教会の中をもいとわず、共産青年同盟員やピオニェールが、アルファベットのカードをこしらえて、七十の爺さんや二十五のお神さんに字を教えはじめた。
それでも、一九二六年には(十二歳以上)五千七十七万千九百
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