同盟内の少数民族の日常生活を、どんな工合に変えているだろうか。
 誰でも知る通り、ソヴェト同盟は地球の六分の一を占める大国だ。北は北極から、南は砂漠。そこには綿が生え、駱駝《らくだ》しか歩けないような地域までひろがっている。ペルシャやアフガニスタンはすぐ隣りだ。蒙古と国境がくっついている。その中に、二十五の人種が棲んでいる。ロシアとひとくちに云っても、例えば第十六回ロシア共産党大会のあった時分のモスクワの街を歩いて見る。
 赤いネクタイのロシア人のピオニェールが歩いてく後から、日本の木綿縞の長ドテラを引っかけたような装のウズベーク人が、長靴でノシノシやって来る。
 長い下髪を赤い布で飾った小柄な女は馬乳で有名なクルムィク人の婦人代表だ。
 颯《さ》っと短いマントに短剣を吊って、素早く胡瓜売りの手車の出ている角を曲ったのは、舞踊で世界的名声のあるカザークの若者だ。
 ホテルの食堂で、英語、ドイツ語がロシア語と混って響くばかりでない。喉音の多い東洋語が活々とあっちこっちで交わされる。――
 十月革命が、各民族の根本的な自立をさせるまで、ロシアの中のこれ等の少数民族はどんなに暮していただろう
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