か? 遠い例はいらない。トルストイのコサックや傑出した短篇「ハジ・ムラート」を読むだけでいい、帝政時代の権力は、自分たちをこやすために搾取するための植民地、属国、だましやすい辺土の住民としてだけ彼等を思い出した。
 コーカサスの雄大極まりない山嶽を南へ縫ってウラジ・カウカアズから、スターリンの故郷チフリースまで、立派な自動車道が通っている。今日そこを走るのは、労働者・農民の陽気な観光客を満載した遊覧乗合自動車だ。が、道普請は、昔そのためにされたのではない。軍用だった。帝政ロシアの権力が武力で、絹、皮革の産地チフリース、石油のバクー市を掌握するための近路として拵えたものなのだ。
 近東の少数民族の大衆は、灼けつく太陽の熱や半年もつづく長い冬の中で原始的な手工業、地方病と、封建的地主、親方の二重の搾取の下で、極めておくれた文化をもっていた。
 自国語で読み書きすること、著作すること、芝居することまでを禁止され、どうしてのびのびした文化が育てよう! 学校がたまに在れば、それはロシア語でだけ教えた。
 赤旗はヤクーツクにも翻った。チェルフスの村にも村ソヴェトが出来た。少数民族の大衆は殆ど信じられない勢で、植民地人民としての奴隷の境遇と、封建的搾取から解放された。
 進歩的な婦人たちは、初めて大っぴらに家族制度の圧迫と戦うことが出来るようになった。今は彼女たちも、ソヴェト権力に護られた婦人社会成員なのだ。二百八種もの民族語の新聞が刊行されるようになって来た。
 僅か三パーセント位しかなかった小学校入学率は、全ソヴェト同盟の文化水準向上につれてドンドン多くなって来た。五ヵ年計画で八歳からの全国学齢児童の国庫負担による就学は、勿論、各民族共和国、自治国を包含してのことだ。
 階級的技術を高めろ! というスローガンは、ソヴェト同盟全土に響き、実現されつつある。党婦人部は、労働組合と協力で、各民族に独特な手工業を中心とする婦人の婦人手工業組合、婦人技術講習会等を組織した。そこで、婦人たちは、先より上手に絨毯を織るように、編物をするようになったばかりではない。生産が社会主義的にやられれば、勤労者に得だという事実を学んだのだ。
 一九二六年に、ソヴェト同盟内の各民族の男女がどの割合で読書きを知っていたか。これは人口千人に対しての調査だ。
[#ここから3字下げ]
 民族別         
前へ 次へ
全17ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング