心理とは、たった一ヵ月、或は二ヵ月その工場を見学した文学衝撃隊《リト・ウダールニク》の到底及ばない実感、正確さ、見とおしで描写される筈ではないだろうか。
 キルションは、こういう根気よい展望をもって汽罐車製造工場を見、それと結びついてはいなかった。キルションの場合にも見られるような生産場面に対する過去の作家のややその場かぎりの題材あさりの態度、及び、現在の作家と生産との結びつきの無統制から、作品活動は、その成果において十分プロレタリアの世界観に立ってのリアリズムにまで到達していない。
 そこで、文学作品の組織的生産という考えが一部の人々によってもち出されたのであった。
 主張の要点は大体次のようであった。
 作家は、一層労働者生活の現実に即し、文学におけるプロレタリア・リアリズムのために各産業別に組織されるべきだ、そして、一年に、どの産業では最少限何篇の小説、戯曲を、どの産業では散文、詩、各何篇という風に計画的に製作したらどうか。この場合重点は、ソヴェトの生産経済計画に従って、或る特定産業の上におかれる。
 五ヵ年計画に結びつけて具体的に見ると、大体の文学的重点は、五ヵ年計画がそれを基
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