敵だね。われわれのソヴェトでもこんな機械が出来るのか!」
 ところで彼が書いて『十月』や『成長』に発表する「職場にて」を見ると、それは十分労働者の心持を掴《つか》んでいない。
 国内戦時代は赤衛軍の指揮官をやって、現在国際革命文学局の書記をしている作家タラソフ・ロディオーノフが、彼の指導するモスクワの大金属工場「鎌と鎚」の文学研究会《リト・クルジョーク》で、丸い赤鼻を一層赤くして、こう批判したようなものが出来る。
「タワーリシチ! ここにも一つプロレタリア文学の誤った手本が出ている。この『職場にて』は、成程機械力が描かれている。機械の統制ある活動の美しさ、歓び、音響、一分間に何本の木材を切断するかという速力についても書かれている。しかし、これだけなら構成派の作家がもと盛に書いたよ。グングン働く機械を見て『アア神よ! 我々近代人を陶酔させる力はこれだ!』という工合にね。これは工場へ舞い込んでびっくりしているインテリゲンツィアの生産に対する異国趣味だ。労働者なら機械を見たとき、その機械に対するもっと異った注意や愛情、自分の道具としてそれを動かすプロレタリアートの社会的階級的な意志をはっきり
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