組織される研究会《クルジョーク》と、その指導者として動員されなければならぬ政治教程《ポリトグラーモタ》の説明者(若い党員)、音楽、文学、ラジオ、科学、美術の各専門技術家を予想している。
工場クラブ、労働者クラブは、大なり小なり講堂をもっている。講堂の壁には、絵が欲しいではないか。工場委員会の文化部は会議を開く。
「どうだね、一つここんところの壁へ何かかけた方がいいと思わないか?」
「異議なし」
「町ソヴェトの倉庫んなかに、元絹問屋の客間にあったっていう、でっかい絵があるぜ」
「ふーむ。どんな絵だい?」
「なんでも黒い髪をたらした女が踊ってるんだ、半分裸でよ。その女の前にある皿に、男の首がのっかってるんだ」
「俺等そんな絵にゃ用がないよ。ちょんぎられた首なんぞ! 欲しいのは、例えばだナ、うちの工場が盛に働いてるところを描いた絵や、ウダールニクだとか軽騎隊の活動だとかを描いたもん――つまり、われわれの社会主義的建設の記念となる絵がほしいじゃないか」
「異議なし!」
「賛成!」
工場委員会文化部は、そこで、ニージュニ・ノヴゴロドのプロレタリア美術団に新しい講堂の壁画について交渉をはじめる
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