を、彼等の性生活、而も病的に拡大された性関係の混乱にだけ置いていることに、作家は計らず自身の階級的立場を曝露している。
 パンテレイモン・ロマノフは、ソヴェト同盟内の自然発生的な日常の事件を題材として書いた。彼の書くものは、わかりやすくて読みいいと云って、多くの者によまれる。しかしロマノフは、題材を、ごく現象の局限されたあれこれの上において、通俗小説としてのヤマや泣かせや好奇心やで引っぱって行く。文章は卑俗で平板である。
 プロレタリア文学は、本質において、ブルジョア文学におけるように、芸術的小説と通俗小説との区別を持たない筈である。しかも、こういう作家たちが、全くブルジョア文学における通俗読物と等しい作物を革命後第十一年目のソヴェトの読者にうりつける隙間があったのである。
 ロシア・プロレタリア作家連盟は、左翼的作家団体の中心となってこれらの現実の状態につき猛烈な自己批判をはじめた。
 プロレタリア文学の発展のために、これまでも彼等は決して怠けていたわけではなかった。しかし、形式の探求、古典の研究、パプツチキとの理論闘争などの活溌さに比べて、直接大衆へよびかける作品そのものの生産は、
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