りにして再現さるべき時になっている。しかし、左翼作家のすべてがそのような大主題を、解放史の全局面から把握し、而も素晴らしい新手法で芸術品に仕上げる程の才能をもって生れているとは云えない。ファジェーエフの「壊滅」、ショーロホフの「静かなドン」などはよい作品だが、国内戦は局部的に扱われているのである。
では、新しいコムソモールの生活を描くか。それは明かに要求されている。若い読者はすべて、そういう作品の現れるのを待っている。そして、またそれを作家は書くべきであった。しかし[#「しかし」に傍点]が、ここへも出て来てぶつかった。今十八歳のコムソモールの心持が帝政時代に十八歳であったものに、果して、わが心のように理解出来るであろうか? わかる[#「わかる」に傍点]ばかりでなく、若い彼等のもっている曇らざる率直さ、科学への関心、健康な意志と、骨身について育っている集団性、国際感情などを、自分のものとして再現する実感が果して幾人の作家にあるだろうか?
国内戦の時代にくらべれば、革命後十年を経た建設期の日常の事件は、今は地味なものとなった。ソヴェトの建設は一見平凡な工場生活、大した変化はないらしく見
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